シンガポールの旅

前回の「放浪」は夏のインドネシアでしたが、今回はシンガポール、といってもジャカルタからの帰りに寄っただけで、「手抜き」と言われても返す言葉のない放浪になりました。 シンガポールの街は、さすがにきれいで、ゴミひとつ落ちていません。ゴミを捨てると罰金を取られるのは皆さん知ってのとおりです。大阪では絶対にできません。御堂筋が禁煙となり、くわえたばこが千円の罰金になったとたん、トラブル続出。「なんでやねん!」「なんでやねん!」で押し問答が勃発します。 

ところがシンガポールでも、ゴミをぽんぽん捨てていいところが一カ所だけありました。120年以上の歴史を誇るラッフルス・ホテルの2階、ロング・バーというウッディーな趣のあるバーです。ながーいバーカウンターがあり、なるほど、これが名前のいわれか、とすぐ気がつきます。  そこでのおつまみは、殻付きのピーナッツで、テーブルの真ん中に写っているばかでかい箱にどっさり入っているのがそれです。ここでは、みんなピーナッツの殻を、遠慮なくぽんぽん床に捨てるのです。他の場所で捨てられないうっぷんを晴らすという意図なのでしょう。実にウィットに富んでます。 

fockcocktail.JPG

この写真の男性はFock教授で私の飲み友達。シンガポールは8割がチャイニーズだそうですが、彼もチャイニーズです。アジア太平洋消化器病学会週間のSecretary General(事務局長)で理事長の次に偉い人です。私には単なる酒飲みのおっちゃんにしか見えませんが、多分向こうも私を同じように見ているのでしょうね。  で、二人がかわいく飲んでいるのが、シンガポール・スリングという有名なカクテル。女性向きだそうですが、このバーではみんなこれを飲んでいます。1900年にNgiam Tong Boonというバーテンダーが、世紀の変わり目を記念して作ったカクテルだそうです。レシピ(下)を見るとジン・ベースですが、結構甘い。私もいつも「甘い」「甘い」と言われます。カクテルではなく「脇」ですね。締めるぞ!

singaporeslingrecipi.JPG

2008.6.27.

インドネシアの旅:ジャカルタ~スラバヤ

今回のドクトルてつおの放浪は夏のインドネシアです。といっても講演依頼に伴うもので、本当の放浪でないところが中途半端。でも、今回2回目の訪問にもかかわらず、「新たな」発見が多かったのです。 「新たな」とカッコつけたのは、前にも聞いていたかも知れないが忘れてしまった可能性が十分にあるからです。最近見たDVDも、前半を過ぎてからやけにストーリーの先が読めるなと思っていたら、前に見たやつだった、ってことがあって、自信喪失気味なのです。 

asiamap_southern_pol_2004.jpg

で、まず、フライトで疑問を感じたことがありました。シンガポールで乗り換え。そのとき日本との時差が1時間でこれは納得。そこからジャカルタへ。シンガポールよりジャカルタの方が、経度では日本に近寄ってるはずなのに、時差は大きくなって2時間とはまか不思議。地球が歪んできたのでしょうか? まーとにかく明るいうちに着きました。6月6日(金)のぞろ目でした。 次に驚いたことは数字です。皆さん、インドネシアの人口をご存じですか? 2億5千万人だそうです。私は、最初の間は2千500万人を一桁間違えて伝えられたと思っていました。ところが、何と日本の2倍もの人たちが、この熱帯の国で暮らしているのです。 

さて、ではインドネシアに島は一体いくつあるでしょう? なんかクイズ番組みたいになってきましたねー。なななななななーんと、1万3千島もあるそうです。ところで、「な」は何回言いましたか? これが本当のクイズなんですけど、ラジオじゃないからすぐわかってしまいますね。 しょーむない話はこれくらいにして、すごいハプニングがありました。ジャカルタで偶然、菊池凛子に会ったのです! 「バベル」でアカデミー賞候補になった、あの凛子さんです。といっても、紙上でですけど。何と、6月7日(土)の「The Jakarta Post」にでかでかと紹介されていました。次の作品「The Brothers Bloom」は完全に英語だけの映画です。以前に、中国人のZhang Ziyiが「Memoires of Geisha」で日本の芸者の役を完璧にこなしたように、第二作目で「菊池は単なる日本人俳優ではない」と評されているのはとてもうれしかったです。それもジャカルタの新聞にですよ。すごい! 

 kikuchirinkojakartapostjune708.JPG surabaya-shark-crocodile.jpg

さて、ジャカルタから飛行機で1時間あまり西に飛んでスラバヤに着きました。海岸沿いのインドネシア第2の大都市です。この都市名のいわれは、サメとワニから来てるそうです。スラがサメ、バヤがワニのこと・・・、あー逆だったかも。まーどっちでも大差なし。アメリカ人が「アリガトー」という日本語を覚えるのに、「ワニ」すなわち「アリゲータ」といううまい方法を考えたまではよかったのですが、いざというときに、同じ「ワニ」を意味する「クロッコダイル」といってしまって、全く通じなかったという話とは全然違いますから。 さてさて、スラバヤに着いたのは土曜日の5時過ぎ。道はモーターサイクルで溢れかえり、車の間を縫うように走っていました。これが、暴走族でも何でもなく、ただの一般人なのです。また、最高で一台に4人が、大人二人に子供二人ですが、またがって同じように走っているのです。よく事故が起こらないものだと思いました。3人の組では、母親らしき人が赤ん坊をだっこしながら、ご飯めいたものを食べざせているのには、びっくり仰天しました。走るバイクの上でですよ! 

 motorcycle.jpgmotor.jpg

この国は、モズラム(イスラム教徒)が80%のマジョリティーです。なぜ、こんな話をするかと言えば、モズラムはお酒をたしなまないのです。でも、この国ではモズラム以外は自由に飲めるので問題ないです。昨年、パキスタンに行ったときは苦労しました。国によってこれほどまでに違うのかというほど厳格で、人の目に付くところでは酒は一切ダメでした。茶器に入れて持ってきて、と頼んでもダメでした。唯一、ホテルのルームサービスのみOK。それも、パスポートのコピーや書類にサインやら、仰々しい手続きが必要でした。その点、インドネシアは過ごしやすかったです。 

シーフードがおいしかったですね。カニのチリソースは、手でむしって食べました。「海のキュウリ:Sea cucumber」と呼ばれるグロテスクな乾燥した黒い棒は、コラーゲンたっぷりの逸品に化けていました。たぶん、なまこを乾燥させたやつだと思う。中華風かな? 美味でした。

 dried-sea-cucumber1.jpg

今回の講演は、Indonesia Medical Association(日本医学会のようなもの)からの依頼でした。インドネシアでは消化器の専門医は100名ほどで、消化器病の大半は一般医が診察しているそうです。日本では日本消化器病学会の会員が3万人を越え、2万人程度が専門医ですから、かなり差があります。インドネシアもスラバヤも300人以上の医師が集まってくれました。これは、向こうではかなり多い方だったようです。講演内容は「胃潰瘍」「ピロリ菌」に関する最新の知見で、質問もかなりあり、関心の高さを感じました。 講演の冒頭に「セラマ パギ」(おはよございます)と片言のインドネシア語で言うと、セラマ パギ! と元気な女性の声が会場に響きました。インドネシアでは女医さんの方が多いそうですが、会場を見るとやや男性の方が多いようでした。ウーマンパワーは全世界共通のようですね。

rimg0005.JPG

右はAziz Rani教授でインドネシア消化器病学会の理事長です。お友達です。 

rimg0020.JPG

rimg0024.JPG

2008.6.19.

サンディエゴの旅

さて、私はやっと今、ブログを始めることができました。5月は学会続きで、サンディエゴから帰ってきたのが5月24日、あと横浜で日本消化器内視鏡学会があり、6月に入って、インドネシアの内科医学会での講演をすませて昨日帰ってきました。インドネシア放浪記は次に紹介します。

私たち、消化器内科教室は、毎年決まって5月に大挙してアメリカ合衆国に渡ります。米国消化器病週間が世界最高峰の学会として、全世界からトップレベルの消化器病研究者・医師が1万6千人も集まります。ですから、大きな会場と収容できるホテルのある大都市で行われ、一昨年はシカゴ、昨年はワシントンDCで今年はサンディエゴで開かれました。

me-sandiego.JPG

サンディエゴは、カリフォルニア州で2番目に大きな都市と聞きましたが、住んでる人は少なそうで、人口ではなく面積のことかなー、と思案するくらいです。メキシコ国境へは車で20分くらいの気候のいい沿岸地で、シーフードも秀逸で、退職者やリッチな人が優雅に過ごすような町みたいです。

学会場のコンベンションセンターは、端から端まで歩くと悠に10分はかかるくらい広く、発表の場所をあらかじめ見ておかないと遅刻しそうです。会場内を自転車で走っている人がいるくらいです。いいのかなー。コンベンションセンターを出ると、正面にすぐ「Gas Lamp」というレストラン街が丘に向かって続いています。昼休みや夜になると紫のバックパックの人たちで溢れます。学会でくれるバッグです。写真を出せないのが残念です。

私はカメラを持ち歩かないのですが、結構、写真は撮ってもらいました。最近感じだしたことですが、写真は撮ってもらう枚数と手に入る枚数が必ずしも一致しないということです。10分の1もないですね、多分。まー、他力本願ですから、あまり強いことも言えないけれど、最近はデジカメで、撮ったあと必ずと言っていいほど「ほら、いい写真じゃないですか」と画面を見せるんですよね。なるほどいい写真だ、と感激するのですよ。で、同じ写真にあまり出くわさない。つまり、「撮るだけ」になっちゃうのでしょうね。律儀に送ってくれる人もいますよ、もちろん。それが、今出てる写真です。

まず、学会のことを話したあとで、食とパドレスの話をしますね。まずは自慢話から。聞くのいやでしょーね。でも、これを聞いてくれないと、楽しい話はなしですよ。

この学会に対する私の思い入れは相当なものなのです。初めて演題の発表が採用されたのは1984年、私が何とまだ34歳のときです(このホームページ「てつおの部屋」の「ホットひといき」にその頃の写真が・・・。唐沢寿明に似ているという説もあるが、彼が私に似てると言うべきではないかなー)。

そのときが海外での2度目の発表でした。英語へのコンプレックスにうちひしがれたのもそのときでした。英語は単なる手段なんだ、英語のうまい下手はその人の価値を決めるものではない、と開き直れるまでに相当かかりました(このホームページ「教授回診を英語でする理由」を見てください)。で、英語を欧米人との戦いの手段とし、「サムライ」に生まれ変わった?のです。

今年は、その25回目の「戦い」でした。教室からの発表15題はトップレベルです。20回以上このような採用数を保ち続けています。採択率もよかったですし、2題はResearch Forumという選ばれし口演でした。また、私自身、同様のセッションの座長(司会)の栄誉に預かりました。千人以上が参加している日本人で10数人しか、この栄誉に恵まれていません。これは、我々の教室の実力を世界が認めている証です。

毎回、みんながいい緊張感を持ってgood job! をこなし、今回も、10数人の教室員と美酒に酔いました。このときも、数回フラッシュが焚かれた記憶があるのですが、案の定、私の手元に写真はありません。見せられなくて残念です。さて、イタリアン・レストランで、一同に会して談笑しているとき、ヘリコバクターで有名なテキサスのDavid Graham教授が家族、仲間と入ってきて、「ミンナ、キョウシツイン? big party!」と驚いていました。

自慢話はこのくらいにして、そろそろ楽しい話をしましょう。サンディエゴはトロリーという路面電車が数本走っていて、ダウンタウン、オールドタウン、メキシコ国境のティワナまでも行けます。5ドルで1日中何回でも乗れます。無賃乗車は何十倍も払わされるそうですが、改札もなければ車掌さんもいない優雅な町です。

080523_025749.JPG

路面電車は路線により、オレンジライン、イエローライン、ブルーラインに分かれています。私の泊まっているグランドハイアットのすぐそばに、オレンジラインが走っています。確かにオレンジの電車でした。オールドタウンに行くには、ある駅でブルーラインに乗り換えなければなりません。そこで、ブルーの電車を待てど暮らせどオレンジしか来ないのです。1時間くらい経って「おかしいな」と思い始めて、次に来た電車を見ると、そのオレンジの電車のおでこのところに「ブルーライン」と書かれていました。詐欺や! 今まで何台も「ブルーライン」の電車が通り過ぎていってたのです。名前を変えてもらわなあかんわ。

ところで、オールドタウンはスペイン人が初めて上陸して住みだしたところだそうですが、雰囲気はメキシコでした。屋外のよく流行っているレストランで、注文したタコスとハフィータ(肉またはエビの野菜炒め)を待ってる間、コロナビールを流し込みながら、シンプルなポテトチップにサルサ(刻んだ野菜入りのスパイシーなソース)を付けて食べたのが一番おいしかった。韓国料理のキムチのようなもの? これだけでも良かったような気がします。レストラン側は怒るでしょうけどね。

実は、ティワナにも行きました。もちろん学会の合間を縫ってですよ。あのトロリーで約30分で着きます。そこからバスで国境を越えてダウンタウンまですぐでした。メインストリートは呼び込みがすごい。ちょうど、前を通ると点灯するライトがあるでしょう。あんな感じで、店の前にさしかかるとスイッチが入ったように「シャチョウ、ミルダケ」「ヤスイヨ」などと声をかけてくる。通り過ぎるとスイッチオフになってイスにすわるのです。そう言う店が並んでいるから、歩いている間、呼び込みが続くわけです。実際、ものは安く、アメリカからここに来て、黒いビニール袋になにやら怪しげな買い物を一杯入れて持ち帰る人が何人かいました。「行きはよいよい帰りは恐い」でアメリカ側へ国境を越えるのに、大渋滞で10分くらいのところを小一時間かかりました。

話は変わって、ちょうど、学会期間中に新聞で知った日本人の活躍、うれしかったですねー。今や、松坂の活躍など、当たり前みたいに思うけど、向こうの新聞に写真入りででかでかと取り上げられているのを見ると、「ほんまや!」と叫んでしまいます。開幕から黒星無しの7勝目をあげたときの記事です。記録は9勝らしいので、どうなったのでしょうかね。

それから、PGAツアーで日本人3人目の希有な優勝を果たした今田竜二氏の記事も出ていました。AT&Tクラシックという結構大きな大会です。こっちは写真なしで、そっけなく「日本人が初優勝」くらいでしたが、日本では大変なさわぎになっていたんでしょうね。証拠を見せます。 5月19日版のThe New York Times紙です。

the-new-york-times-imada5192008.JPG

また、このとき平行して行われた女子のサイバー。クラシックでは、上田桃子が11位タイに入っていました。

the-new-york-times-ueda51908.JPG

さて、最後はパドレスの話をしましょう。サンディエゴを本拠地とするこのチームは、ナショナルリーグ西地区の最下位に甘んじています。井口が2番セカンドで活躍?しています。球場のペトコ・パークは、ダウンタウンのど真ん中にあり、ガスランプ通りのすぐそばに位置しています。

petcoparkpadres.jpg 

私が見に行ったのは水曜日で、このときは運良く大勝しました。最近無いことのようです。阪神タイガースの爪のあかでも持ってきてあげたら良かったですが、この日は必要なかったみたいです。相手はシンシナティー・レッズだったと思います。井口は2安打し、2塁への盗塁も成功させました。それどころか、悪送球を誘い、3塁に達し得点につなげました。そのあと、豪快に4本のホームランが出て、バックスクリーンから花火が何度もうち上がりました。5月も半ばを過ぎたというのに、この地域には珍しく、小雨模様で風も冷たく上着を着ていても寒いと感じる気候でした。

明くる日の新聞には、パドレス勝利の記事がでかでかと出ていましたが、写真で紹介されていたのは、ホームランを放った選手ではなく、なんと2塁に果敢なスライディングをしている井口の姿でした。サムライ・スピリット!万歳!

cu060525a4urchin3.jpg

それにしても、ウニは最高でした。大ぶりなひとかけらのウニでネタがはみ出るにぎりは見たことがない。それでいて味は繊細で美味でした。時差ぼけが中途半端な状態で帰路につきました。ワイン片手に機中でまどろみながら、気が付いたら、もう一方の手を前に伸ばしていました。その途端に、つかんでいたはずのウニのにぎりが、泡のように消滅していました。

2008.6.11.