タイの旅:バンコック その3

 「1週間のご無沙汰でした。」で始まる歌謡番組が昔ありました。50代後半以降の人は知ってると思います。玉置 宏さんが司会をしていた「素人のど自慢」かなんかそんな感じ。でもバンコックとは全く関係ありません。ブログの更新がなかなかできなかったので、ふと玉置さんのせりふを思い出しただけです。1週間どころのご無沙汰ではなかったですね。埼玉のファンの方、お待たせしました。 

 今回は、感動のバンコックを分かち合いたいです。バンコック最後の夜が近づいてきて、無性にジャズが聴きたくなったのです。宿泊しているホテルに聞くと、60階でやってるかも、というので行ってみました。ホテルはルブア・アット・ステートタワーというバブリーなホテルです。やはり「かも」がくせものでした。高いだけが売り物のホテル(写真)。超高層で高いだけでなく、飲み物の値段も高い! 

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「写真:ルブアホテルの全貌。バンコック1の高層。」

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「写真:屋上のスカイレストラン。数人のガードマン風の黒服がいつもうろついている。空をよく眺めているので漁師上がりの天気予報士かも。雨風に弱そうなレストランです。」

 それにジャズなんかぜんぜんやってなくて、ポップミュージックが流れているだけ。ライブすらやってませんでした。おまけに頼んだバーボンが出てくるのが遅い。怒ったふりして金を払わないで出てきました。それにしても、あんなしょうもないバーにあふれるほど人が入っていたのはどうも解せません。そうか!「かも」や! 

 ホテルを出てシーロム通りを東へ少し行ったところに、ジャズっぽい店を見たような気がしてたので、ホテルから歩いていける距離だし、行ってみることにしました。ニウズ(NIU’S)という店でした。ニウさんの店なんでしょうね、どうでもいいけど。そこはレストランバーみたいなところで、まず中か外かって聞かれました。中でジャズライブをしているのにです。まー、客の意思を尊重しているのでしょうけど。それで当然「中」といって入りました。 

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「写真:ジャズを聴いたレストランです。当日写真を撮るのを忘れたので明くる日の朝に撮ってきたものなので、雰囲気が文章と異なっていますがご了承を。」

 そこはテーブル席が6-7つ程度で、かぶりつきの席にアメリカの退役軍人っぽい人が座っていました。いつも来ているような感じです。もう、午後10時近くになっているというのに、アルコールではなくコーヒーを片手に聞き入っていました。私はそのすぐ後ろの席に座りました。他には、私の隣の席の年の離れたカップルと、隅っこの席に大学生風のグループ6名くらいで淋しいライブです。

 ところがびっくり、歌手は堂々たる(体型だけでなく)初老の黒人女性(下の写真はちょっと若いときのもの)で、気取るところもなく、買い物かごをさげたまま歌っているようなナチュラルさとカジュアルさ。それでいて声に迫力があり、その上表現力豊かときては、一瞬で魅了されてしまいました。若い頃はきっとアメリカで一世を風靡した歌手なんだろうなと空想するほどです。お名前はCherryl Heyseさん。これほどジャズと縁遠い地で本場のスタンダードジャズに出会えるだけでもラッキーなのに、こんなすばらしい歌姫のソウルフルな声で聴ける幸せをかみしめていました。 

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「写真:歌手のおばさんからいただいたCDのジャケットです。ツーショットの写真をお願いするのを忘れてしまったことが悔やまれます。」

 ところがです、隣のカップルはいちゃつくのに忙しく、隅の席の学生にいたってはペチャクチャと話しに夢中で、このすばらしいジャズを台無しにするつもりかと腹が立ってきました。「外に出ろ!」と店の人に言って欲しかったけれど、この店ではそれが普通の光景だったのでしょうか? ただボーっと立って追加注文が来るのを待っているだけのような無関心さです。 

 またまた、ところが、ですが、その歌手はまったくそのような光景を意に介さず、ひたすら楽しそうに歌い続けているのに、さらに感動しました。普通は「静かに!」とか言ってしまいそうだし、ひどくプライドが傷つけられると思う。そうは言わなくても、必要以上に声を張り上げて客に気づかせるということもなく、環境に惑うことなく歌いたい歌を歌いたいように歌っているのです。 

人に聞かせようとして歌っているのではないことにやっと気づきました。歌いたいから歌っているのです。聞きたい人は勝手に聞いてちょうだい、という感じですね。それでいてつっけんどんなところはこれっぽっちもない。これぞ自然流。まさにジャズの神髄といえるのではないでしょうか。

 感動に次ぐ感動で、ステージが終わるやいなや思わず握手を求めに行ってました。感動の余り、ツーショットの写真を撮らせてもらうのを忘れたのが残念でなりません。その代わりといってはなんですが、渡したチップのお返しのつもりでしょうか、もらった1枚のCDが残っています。すばらしいバンコックの最後の夜でした。生き方まで教わったような気がします。 ということで、ちょっとでも感動を分かち合えたとしたらうれしいです。

 ところでいくら待ってても今回はオチはありません。期待しててもダメですよ。オチ考えるのは体力がいるのですから。では次回までサイナラ!