エジプトの旅:その3

 明けましておめでとうございます。エジプトの旅も年を越してしまいました。

 さてさて、お待たせをしました。エジプトの旅も佳境に入ってきました。今回は、シャハットというツアーガイドの誘いに乗って、わざと騙されてみようかと思ったところからです。

 彼が勧めた石細工の店、ガラス細工の店、パピルスの店、宝石細工の店。全て政府認定の店で安心とのことです。ところが、車が店の前に着くと、シャハットは開口一番「写真撮影は禁止されています」。観光地では聞き慣れた文句です。でも、政府公認の店の写真がどうして? 私の疑いは確信に変わりました。私の指は密かにシャッターを押していました。

ガラス細工と香水の店では、私の入店に合わせて制作のパーフォーマンスを見せてくれました。また、お茶やコーヒーのサービスまで。「何も買わずに帰りにくい」という雰囲気作りでしょう。システム化していました。その後、店員が説明します。ひとつのちっちゃなガラス細工を取って底を返すと値段が貼ってあります。500エジプトポンド(約1万円)でした。ホテルで同じものが250エジプトポンド、街では75エジプトポンドで売っていたのを前夜、偶然見ていました。

  img39053633.jpg私は、何食わぬ顔でそのガラス細工を値切ってみました。400まで値切るのにも相当苦労しました。満足げに振る舞っていると、シャハットがにこにこ顔で寄ってきて、耳元で「安く買いましたね」。リベートを取っていることは確実です。あとのことを想像するとワクワクしていました。 

その店でもうひとつ発見したことは、値段表が数個のガラス細工にしか付いていないことです。しかも、店員は数千個あると思われる品物から、外さずに値段表の付いた数個を見分けられることを確認しました。おそらく査察が入ったときの備えでしょう。もちろん、べらぼうな値段表の付いた品物を素早く隠すことができるようにです。 このときまでに、私の中にはすでにシナリオができあがっていました。ここからは、証拠集めです。私はシャハットが感づかないように、「記念写真」と称してツーショットを撮りました。そして、名刺を要求しました。「日本から友達でも紹介してくれるのかな?」と彼は思ったはずです。ホテルに車が着いたとき、シャハットは手抜きをして、車から降りずにバイバイしようとしたので、ホテルのロビーでちょっと話があるから、と誘いました。チップでももらえるのか、とそそくさと付いてきたのを尻目にホテルに入りました。 

私は、笑いをこらえながら、真剣な顔でこう言いました。「実は私はエジプト政府から2つのミッションを受けているんです。」 彼は怪訝そうな顔をして、2つ目のミッションを考えるというよりは、何を言い出すかいぶかしがっている様子でした。2つ目のミッションを私が語り始めると、シャハットは眼を剥き、顔面蒼白となり、身震いし出しました。 「私はエジプト政府から、悪徳なツアーガイドと商店の有無を調査して欲しいと頼まれていた」「日本人観光客をはじめ、ヨーロッパの観光客からも政府に苦情が殺到していて、本当だとしたら観光客が減ってエジプトの財源が大打撃を受けるというのが調査の理由」「私はエジプト政府から公人として呼ばれているので、このミッションに関するレポートを提出しなければならない」と続けたあたりで、シャハットの思考回路はグルグルに回り、もつれていたことでしょう。 

写真を撮られたこと、名刺を要求されたことが、シャハットの頭の中でやっと一本につながったに違いありません。『何ということだ。写真と実名入りでエジプト政府に報告されてしまう。』彼は茫然自失となり、失禁寸前でした。だましたつもりがだまされた!  私は、彼に改心を約束させ、エジプト政府に提出する「報告書」には彼の写真と名刺を付けないことにしました。彼が実家の両親から「Kurna」に来るな、と言われないために。

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(Kurna村)