サンアントニオの旅

 10月も半ばだというのに、まだ半袖でも暑いサンアントニオに着きました。砂漠にできたメキシコから300 kmしか離れていないテキサス州の南の都市なので仕方ないです。

 この街に日本人は少なく、日本レストランも数件しかありません。しかも、従業員に日本人はひとりもいません。日本料理が国際的になった証拠でしょうか? 

 ここは、1840-1860年にサンアントニオさん、しゃれではありません、によって作られた街だそうです。まず、運河を作って交通をボートでするようにしたのですが、これが大当たり。今では観光のスポットになってます。この運河は環状になっていて、リバーウォークといいます。信号がないし、木々や鳥やリスがいるので散歩だけでなく、通勤に歩いている人も多いです。

 ここを歩いていると、な、な、なんと、アメリカにも等間隔の法則が・・・。鴨川の堤に座るカップルと同じだ! ここでは、ネギはしょってませんが、カモが同じ法則を守っていました。しかも、そばを人が通っても、全く動こうともしません。おそらく、仲間が鍋に入れられたことは、今までなかったのでしょうね。自然が溶け込んでいます。

nec_0064.JPG  

 さて、この運河には観光用のボートと交通手段としてのボートの二種類があります。観光用のボートは運転手がガイドをしてくれます。交通手段のボート(TAXI)はチェックの旗が立っていて見分けることができますが、運転手は運送業です。でも、ガイドが迷惑な観光客は、このTAXIに乗ってます。 

sanantonioriverboats.jpg

 観光用のボートは、決まった駅があり、乗る人には分かりやすいのですが、TAXIは、一応それらしき場所の指定はありますが、手を上げれば着けてくれるようです。駅らしいなんの目印も立ってません。だからTAXIなんですかね?

 「TAXIに手を上げて♪~」と鈴木聖美のハスキーな声が聞こえてきそうですね。ジョージの家には行きませんけど。雨にも濡れませんよ(分かってくれると思いますけど、「TAXI」の歌詞に出てくる言葉です)。だって、ここは、1年のうちに雨は60日くらいで、それもほとんど一瞬です。雨量も月に60 mm程度ですから傘もいりません。

 どこからでも何回でも乗れる24時間チケットが10ドルぽっきり。乗り放題です。でも、実際は9:00AM-9:00PM、んっ、12時間やん! 詐欺や! でも運転手さんは愛想がいいです。 

nec_0074.JPG

 それに引き換え、リバーウォークの賑わっているレストラン Casa Rioのウェイトレスは愛想悪い! はやってるから強気~。メキシカンで味はまあまあ。立地条件がいいのでしょうね。

 メキシカンは最初に必ずシンプルなポテトチップスとサルサ(トマトベースのスパイシーな野菜ソース)が出てきます。これがなんと勘定には付いていない! タダです。韓国料理のキムチみたいなものですね。これにコロナビールがまた合うんです。

 ウェイトレスの愛想も悪いし、結構、ポテトチップスでサルサをすくって食べていると、お腹も落ち着いてきたので、「勘定!」といってやろうかとも思いましたが、ここで、また、日本の評判を落としてもいかがなものかと、ふと、政治口調になって、おもわず、タコスとファヒータ(肉と野菜の鉄板焼き)を注文しました。お人好しですね。

 出てきた物を見て、食欲がげんなり。これでもか、の量は、10年ぶりに帰った田舎での歓迎料理を遥かに超えていました。もっとも、私は大阪の都心で生まれたので田舎はありませんが・・・。

 肉だけでも悠に500 gはあるでしょう。私は細切りの肉を想像していたので、2-3切れがやっとでしたが、ジューシーとは程遠い。料理は全部で20ドルちょっとでしたから、安いといえばそうですけど、せっかく来たら、多少高くても美味しい物を食べたいですよね。なんで、あの店があんなにはやっているのか理解できません。そんな感性もセンスもないアメリカ人が地球を支配していていいものか、はたと疑問に感じた今日この頃でした。

 この街は2日で飽きそうです。見る所は、アラモ砦、アメリカン・タワー、スペイン村(La Villita)くらいです。料理もメキシカン一辺倒。もうええわ、というぐらいメキシカンなのです。

 ちょっとメキシカンとは離れたいと思い、スペイン村の入り口のレストランに入りました。期待していたのに、まったくスペインの「ス」すら感じられない場所でした。やはり、ポテトチップスとサルサが出てきました。ところが、そのサルサがちょっと風変わりで美味!  

chips_and_salsa380.jpg

 団体客が来て、その目の前で実演してサルサを作っていましたが、青唐辛子にニンニクに焼きトマト、あともろもろを石臼に入れて石の棒(卑猥な形にも見えるやつ?)でグリグリ潰すのです。店によって微妙に違うようで、感動しました。

 その店の壁には、「テキーラの効能」が20項目くらいでかでかと書かれていました。シャレですが、さすがメキシコを代表する酒。テキーラベースのカクテル、フローズン・マルガリータが人気です。効能のトップは「気が大きくなる」でした。他にも、「過去を忘れさせてくれる」とか、なかなか面白いことが書いていました。

 margarita.jpg

 そういえば、昔、ニューポートビーチ(カリフォルニア州でメキシコに近い都市)で学会があったとき、ホテルのバーで飲んでいて、テキーラをショットグラスでチビチビ飲みだしたとき、「ノー」という声が聞こえたのを思い出します。その声の主は、楕円形のカウンターでちょうど私の真向かいに座って飲んでいた3人のメキシカンでした。

 彼らは、テキーラの飲み方が間違っているというのです。正しい飲み方を教えてやると。正式な方法は、1.左手の甲の親指と人差指の間を舐めて濡らす、2.そこに塩をふりかける、3.その親指と人差指で半分に切ったライム持つ、右手でテキーラの入ったショットグラスを持つ、4.左手甲の塩を舐め、テキーラを一気に飲み干し、ライムを口の中に絞る(4の工程は1秒以内でないとだめ)、と教えてくれて、実際3人そろって実演してくれました。

 圧倒されていると、その一人が「Your turn(あんたの番だよ)」と言ってます。せっかく正式な飲み方を教えてくれたので、喜んでやってみました。ぎこちなかったのでしょうね。向こう側で、立てた人差し指を振り子のように振りながら「ツッ、ツッ、ツッ」と舌を鳴らしています。

 「もう一回やるからちゃんと見ときや」といって、また3人一斉に一気飲みです。そうやって、交互に一気飲みし、5杯目くらいまでは覚えていたのですが、気がついたらベッドのなかでした。もう朝です。ガンガンする頭を抑えながらプールサイドを通って発表の部屋に行く途中、「ヘーイ!」という声が聞こえました。プールの真ん中で女性が手を降っています。よく見ると昨日のメキシカン! 「負けた」。きっとテキーラに免疫ができているんや、と自分を納得させていました。

 で、サンアントニオに戻りますが、もうメキシコ料理は勘弁して! お願い、といって誰も助けてくれません。で、とりあえず、散歩中に見つけた日本料理店Sushi Zushiに行きました。期待してなかった割にはまあまあ。刺身はちょっとかなー、と思っていたので、鉄板焼きミックス(combination:エビ、ビーフ、チキン、野菜)と野菜焼きそばを頼みました。

 ところが、値段を見てみると、鉄板焼きミックス 20ドル、野菜焼きそば 8ドル。メニューをボーと眺めていて「値段は量を示す」という教訓を思い出し、あわててウェイターを呼びました。20ドルのcombination鉄板焼きは、きっとこれでもかの肉とエビ満載ディッシュでしょう。

 「オーダーを変更して欲しい。野菜の鉄板焼き(8ドル)とミックス焼きそば(13ドル)」。これが正解でした。鉄板焼きは野菜たっぷりで新鮮、チョーおいしかったです。でも焼きそばの麺はフニャフニャで食感が悪かった。

 で、次のサバイバルは、リバーウォークから離れてみようということにしました。でも歩いていける「キング・ウイリアムス歴史地区」です。ダウンタウンから歩いて10分もかからないくらい。ドイツ人が最初に居住したところらしく、ヨーロッパ風の住居が並んでいます。

 ひときは目立つピンクの館が、南アラモ通りの右手に現れました。「Liberty Bar」と書いてあります。入ってみると、イングリッシュ的内装。隣の人はでかいハンバーグを食べているかと思えば、スタイルが気になるお姉さん方はサラダだけ?

nec_0028.JPG  Liverty Bar」です。 

 で、私は、ガーリックトーストにパスタを注文しました。もちろんビールも。今回は、ちょっと濃い目のメキシカン・ビール、Dos Quadros。「XX」のラベルが特徴的です。まず、「ガーリック」はアメリカではなかなかお目にかかれない。彼らは、「うまみ」の感性がないから、口臭を気にしてニンニク(ガーリック)を好まないアホな民族です。タバコも同じですね。ニンニクにしてもタバコにしてもやる人は罪人扱いですよね。でもマリファナは州によっては合法なのですよ。変な人達ですよ、まったく。

 でも、メキシコはサルサにニンニクを入れているのを見ました。フランス料理、イタリア料理、スペイン料理みんなニンニクをきかしてます。中国、韓国、タイもそうです。だいたい、ステーキハウスで薄切りニンニクの唐揚げが付いてこないのが変ですよね。ガーリックライスなど夢のまた夢。ニンニクしい!?

 しょーむないダジャレを言ってる場合じゃない。感動があったのです。このアメリカで、このLiberty barのガーリックトーストは、なんとニンニクまるごと揚げたものが2個も出てくるのです。それをを二つに横切りして。

nec_0031.JPG

 蜂の巣状の殻にたたずむニンニクが、ほんのり緑色に色づき(おそらくオリーブオイルでしっとり揚げたため?)、ペースト状に柔らかくなって、私の胃袋に入るのを今か今かと待っているのです。私はそのニンニクちゃんをナイフでトーストの表面にふんだんになすりつけ、かぶりつきました。フォー! 叫びたくなるような一瞬でした。うっま!

 もうひとつのディッシュ。忘れてませんか? パスタです。スパゲッティーはありませんでした。フェッチーネというキシメンのようなやつだけです。まー、メキシカンでなければいいかという程度の期待しかしてません。でも、ガーリックトーストをメニューに見つけたとたんに、これはいけそうだと確信し、注文するときに「できれば、ニンニクをミンチしたものを入れて調理して(If possible, please add some minced garlic when you cook pasta)」とちゃっかり頼むと、こころよく了解してくれました。

 で、トマトソースは最高でしたが、パスタがフニャフニャ。こっちの人はフニャフニャが好きなんですかね? 麺は歯ごたえだと思いますけど・・・。夜中に小腹が空いて作った「どん兵衛」の麺のほうが、よっぽど腰がしっかりしていました。ここの麺はダメみたい。教訓:サンアントニオにイケメンは存在しない(かも)。

 しかししかし、ここはテキサス。テキサスといえば、ステーキ。イケメンは居なくても、ステーキな人は居るかも、とか、ワケのわからないダジャレを期待している場合ではないですよ。本場のステーキハウス「Ruth’s Chris」に行きました。

 肉の種類は、テンダーロイン(ヘレ)、サーロイン(ロース)がメインですが、私はribeyeがお勧めです。一番ジューシーで、値段が一番安い。ここでもアメリカ人の価値観には愛想がつきます。

 Ribeyeとはリブ、すなわち焼肉でいうカルビ、バラです。骨付きですと、骨の周囲があぶらがのっていて美味! ここのは16オンスだったので、500 gくらいでしょうか。日本でミディアムくらいがちょうどいい感じですが、こっちではミディアム・レアと頼んで日本のミディアムくらいです。アメリカでミディアムというとウェルダンくらいに焼かれてしまい、ジューシーさが減ります。でも、もちろん、全部は食べ切れません。プチ・ステーキという女性向きのメニューがありますが、ヘレに限定されています。リブでもプチを設けて欲しいですね。

 いよいよ、こってり料理には飽きてきました。ニューオリンズにでもひとっ飛びしてシーフードが食べたいなと思っていた矢先、リバーウォークを歩いていてたまたま見つけたレストラン Landry’s Seafood Restaurantと看板が出ていました

 レストランの前はクリーニング屋さん? と思いきや、ランドリーは創業者の名前でした。1943年創業となってます。まずかったら、とっくの昔に廃業しているだろうと期待して入りました。席はもちろん外で、川沿いのテーブルを要望しました。

 ♪ホッテルはリバーサイド♪ などと井上陽水など、お好きですか? 実際、リバーウォーク沿いに一杯ホテルが建っています。ハイアット、マリオット、ホリデイ・イン、ヒルトンなどなど。河はアバンチュールに欠かせないツールですね。マリリン・モンローの「帰らざる河」、007の「ロシアより愛をこめて」だったかな? ベニスのゴンドラでのラブシーン。もっと一杯あるはずですが、思い出せません。

 で、このシーフードレストランの話に戻って、メニューで「Live marine robster — Market」という一行が目にとまりました。活けのロブスターで時価という意味です。私は寒いフトコロ事情も忘れて、迷わずそれを注文し、おまけにoyster(牡蠣)まで頼んでしまいました。しかも、なまでです。

 牡蠣はなんといっても、レモンを絞って、なまを生姜とピリ辛トマトソースでシュルっといくのが美味ですね。それで、アメリカでは2回当たりました。日本でも1回あります。あれは苦しい! 上げ下げ(上げがメイン)で立ってられないくらいふらつきます。それでも、めげずに食べるところがえらい! なにをひとりで感心してるの?

 しかし、それだけ当たると、避け方もうまくなります。これは、イチロー選手のように動体視力は要りません。食べる前に、血圧でも高いふりをして、抗生物質を飲むのです。ウェーターには絶対わかりません。そのせいかどうか証明のしようがないですが、セーフでした。生牡蠣、砂漠のど真ん中なのにメッチャ美味しかった!

 続いてロブスター。Liveですよ。ミスチルちゃうよ。年寄りにはわからんギャグやなー。娘にはウケるかも? こないだも観に行ったゆーてた、ってひっぱりすぎやねー、わかってます。で、ボイルしたのが一匹まるごと出てきました!

 そらそーや。半分だけでは生きてへんわなー。これがまたアメージング! 身が甘い! あまいじんぐ? シャレちゃうよ。意識し過ぎでんな。私は脇が甘い。ほっといてんか! しかしほんま、こんなおいしいロブスターは初めてでした。写真取るのも忘れて放心状態。

 これがなんと、1匹まるごと30ドルちょっと。なめとんかー! の逆。円高でもあるけど、2500円でこんな幸せ、得した気分。なんか、委員会でも開きたい気分。なんでやねん? と突っ込んでくれたら、「こんなに得していいんかい」って言える。メキシコ料理地獄にハマる寸前の快挙にしては、あまりにもすごかった。